2020.09.17
【解決】ツーバイフォーのメリット・デメリットを全て公開!在来軸組とどっちがいい?
私は大工として建築業界に携わってから、経営者となった現在までの15年間、日本の伝統的な在来軸組という工法にこだわって家造りをしてきました。
しかし、お客様から打ち合わせなどで、同じ木の材料を使う工法の「ツーバイフォーってどうなの?」と相談されることが何度かありました。
家は骨組みの材質や作り方である工法によって、メリット・デメリットが全く違ってきます。
工法をきちんと理解せずに決めてしまうと、住んでからその違いに気づいて、考えていたのとは違う家になってしまったと、後悔することになります。
今回は在来軸組工法と同じ木の材料を使う、ツーバイフォーのメリット・デメリットの全てを、できるだけわかりやすくお伝えします。
このブログを読んでもらえれば、ツーバイフォーと在来軸組工法の違いがはっきりわかり、自分たちにはこの工法が合うなと判断できるようになります。
これから家づくりを考えている人にとって、工法のどんな点に注意すればいいのか参考になりますので、ぜひ最後まで読んで下さい。
ツーバイフォーの広い空間が取りにくい
結論から言うと、なるべく広い空間で大きな窓のある家が希望の方は、ツーバイフォーではく、耐力パネルを併用した在来軸組工法がおすすめです。
その理由は、ツーバイフォーは金額が安いのですが間取りの制限が多く、広い空間や大きな窓が取りにくいからです。
また、ツーバイフォーは1つ1つの壁が構造上必要な耐力パネルとして組み上げられているため、後から壁を取って空間を作ったり、壁を移動したりするのが難しくなっています。
そのため、将来リフォームや増築の可能性がある人にも、あまりおすすめできません。
在来軸組工法であればそれらのデメリットが解決できて、しかも耐力パネルを併用した在来軸組工法なら耐火性や気密性も高くなります。
ツーバイフォーのメリット
もちろんツーバイフォーが合う方もいると思うので、まずはツーバイフォーのメリット・デメリットを全てお伝えします。
まずメリットは次の3つがあります。
①金額を安くできる
②パネル構造
③高い気密性
1つずつ順に説明していきます。
①金額を安くできる
まず一つ目のメリット「金額を安くできる」について説明します。
ツーバイフォーはもともとアメリカで生まれた工法で、2インチ×4インチの角材で組んだ枠に木のパネルを打ち付けて壁を作り、それを箱にして家を作ります。
アメリカの開拓時代に専門的な技術がない普通の人でも、簡単に家を作れるようにと考えられた工法です。
そのため作業手順が細かくマニュアル化されていて、しかも材料の加工が簡単で木と木の張り接合部は釘や金具を使うだけなので、少し経験すれば誰でも作れるようになります。
在来軸組工法のように複雑な手加工など高い技術が必要ないため、職人さんの単価を抑えることができます。
また、材料の種類が少なく構成もシンプルなため、大量生産により材料費も安くすることが可能で、人件費と合わせると全体の費用をかなり安くできるのです。
②パネル構造
2つ目のメリットは、パネル構造だということです。
木のパネルを組み合わせて箱を作るパネル構造は、高い面剛性と耐火性を持っています。
面剛性とはパネル全体で力を受け止める仕組みで、地震や台風など外から加わる力にたいへん強い構造です。
また、パネル構造は隣の家の火事が燃え移りにくいという、高い耐火性も持っています。
木のパネルなので燃えやすいと思うかもしれませんが、木はある程度燃えて表面が炭になると、火の侵入をストップする性質があります。
周りが火事になっても火が燃え移りにくいため、条件によっては火災保険料の割引が適用されるほどの、耐火性能が認められています。
③気密性の良さ
そしてメリットの3つ目は気密性の良さです。
パネルをつなぎ合わせて箱のように家を作るため、そのつなぎ目をしっかり埋めてあげれば気密性がよくなり、保温性能が高く冷暖房の効きがいい快適な家になります。
従来の在来軸組工法の家では、外壁の内側はシートが貼ってあるだけのため、隙間が多く冷暖房がかなり逃げていました。
しかし、ツーバイフォーは隙間を少なくすることが可能なため、冷暖房の効きが結構いいと特に寒い地域で人気が高くなりました。
これは実際に体感できる、ツーバイフォーの大きなメリットの一つだと思います。
ツーバイフォーのデメリット
続いてツーバイフォーのデメリットですが、主に次の2つがあります。
①自由に設計できない
②湿気がたまりやすい
これも1つずつ説明していきます。
①自由に設計できない
まず1つ目のデメリットの、自由に設計できないことについて説明します。
ツーバイフォーは構造材の配置に制限が多いため、広い空間を取ることが難しい工法です。
一方で在来軸組工法は、梁を太くしたり柱や筋交いを増やしたりして補強ができるため、広い空間を取るなど自由な設計ができます。
ツーバイフォーは壁を減らしにくい
またツーバイフォーは壁の面で強度を取る構造なので、壁の面積を減らすような大きな窓を、外部面に取りにくいというデメリットもあります。
段ボール箱を想像してもらうとわかりやすいのですが、そのままなら結構しっかりしている段ボール箱でも、大きな四角いくり抜きを作るとグニャグニャしてしまいますよね?
それと同じで、ツーバイフォーは壁面積を減らすと建物が弱くなるため、大きな窓が取りにくくなっているのです。
冒頭でもお伝えしましたが、ツーバイフォーは壁が減らせないために将来リフォームで壁をくりぬいて通り道を作ったり、壁を移動して部屋を広げたりするのが難しい工法です。
このデメリットは、増改築が比較的簡単にできる在来軸組工法との、大きな違いになります。
②湿気がたまりやすい
2つ目のデメリットは、気密が良いぶん家の中に湿気がたまりやすいことです。
湿気の少ないアメリカで考え出された工法なので、換気についてあまり考慮されていないため、日本に入ってきたばかりのころは、カビが生えるトラブルがかなりあったそうです。
湿気の多い日本で気密の良い家を作るときは、必ずしっかりした換気設備を付けないと、結露やカビ、ダニの発生に悩まされることになります。
湿気がたまるとシロアリを引き寄せる
また、シロアリは湿気がある場所を好むため、食べ物である木で作られて湿気がたまっている家は、シロアリを引き寄せることになります。
しかも、在来軸組工法で使うヒノキや杉の木などと違い、ツーバイフォーはスプルースやホワイトウッドといった、シロアリが食べやすい柔らかい木を使っています。
このため、もし家の中にシロアリに入られてしまえば、被害が大きくなりやすくかなり危険です。
ツーバイフォーを検討するときは特に、どんな湿気対策や換気方法を取っているか、しっかり確認するようにしましょう。
耐力パネル併用の在来軸組工法がおすすめ
ここまで聞いていただくと、自由に設計できないことを少し我慢して、しっかりした換気設備を付ければ、なかなかツーバイフォーもいいのでは?と思う方がいるかも知れません。
しかも、高い面剛性と耐火性、気密性の良さは、大きなメリットです。
しかし、冒頭で紹介した耐力パネルを併用した在来軸組工法は、ツーバイフォーのメリットを取り入れながら、デメリットも解決する工法になっています。
在来軸組工法は柱や梁や筋交いで家を支えるため、広い空間を確保したり大きな窓を付けたりと、自由に設計することができます。
しかも、外側に耐力パネルを貼れば面剛性と耐火性の強さ、気密性の良さも併せ持つことができるのです。
もちろん、どちらの工法にしても安心して住める家にするには、丁寧で腕の良い大工さんに作ってもらい、適切なシロアリや湿気の対策をしっかり行う必要があります。
まとめ
ツーバイフォーは少しでも費用を抑えて家を作りたい人にはいいですが、なるべく広い空間で大きな窓のある家がいいという人には、正直あまりおすすめはできません。
また、建てた後に壁を抜いたり移動したりするのが難しいため、将来リフォームや増築を考えているという人にも向かない工法になります。
逆に耐力パネルを併用した在来軸組工法は、ツーバイフォーのデメリットを解決しながら、高い面剛性や耐火性、気密性を持った、ハイブリッドの工法になっています。
費用を安く抑え、早く建てる点に関してはツーバイフォーの方が有利ですが、湿気を吐き出す換気設備やシロアリ対策をしっかり行えば、在来軸組工法の方が有利になります。
大切なのは長いスパンで考えた際にどちらが良いのか、特に家は生活の基盤でずっと暮らしていく場所なので、ライフスタイルの変化にも柔軟に対応できた方が良いと思います。
今回のブログが安心して快適に暮らす家を作るための、工法選びの基準として少しでも参考になれば幸いです。
ご覧いただきありがとうございました。
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