2020.09.24
【プロ伝授】なぜ、鉄骨造より木造をオススメするのか?性能、コスト、計画毎に徹底解説
「鉄骨造と木造、どっちの方が良いですか?」この質問はInstagramや相談会などのイベントで、本当によく聞かれるテーマの1つです。
なんとなくみなさん漠然と木造住宅は「一般的に多い」というイメージで、鉄骨の方は「強そう」というイメージがあり、よくどちらが良いか質問されます。
あなたも鉄骨のほうが強いと思っていませんか?正直、それは間違いです!
他の住宅のプロの方々もよくこの話題は取り上げていて、どちらにしてもきっちり施工されていることが大切で、「構造自体は鉄骨造と木造、どっちでもいい」「構造は気にせずに、気に入った会社で建てましょう」という結論が大半です。
きっちり施工されているのはもちろん大切ですが、それは大前提の話で、この答えだと質問した人は腑に落ちていないですよね?
でも私は個人的に、木造の方があらゆる面で圧倒的に有利だと思っています。
鉄骨と木造を比べると実際どうなのか
よくある話ですが、鉄骨の会社に「木造と悩んでいる」と言うと木造の悪口を言われ、反対に木造の会社に「鉄骨と悩んでいる」と言うと鉄骨の悪口を言われます。
そういったポジショントーク抜きで、実際どうなんだという本当の所の話を、今回はしたいと思います。
今回は鉄骨造と木造それぞれのメリット・デメリットを、なるべく分かりやすく解説して、自分たちが建てるなら「この構造がいいね」と、明確にしてもらえる内容になっています。
注文住宅だけではなく建売や中古住宅購入の際にも参考になるので、これから住宅の購入を考えている方はぜひ最後まで読んでください。
3階建て以上なら鉄骨、平屋、2階建てなら木造
結論から言うと3階建て以上なら鉄骨造、平屋、2階建てなら木造が圧倒的に有利になるので、この理由をいろいろな側面から紐解いていきたいと思います。
ただ大前提として、鉄骨造が駄目という事を主張したい訳ではないので、その点は誤解をしないでください。
また鉄骨造の中にも重量鉄骨と軽量鉄骨の2種類があり、細かく言うと違いがあるのですが、今回は一括りに鉄骨造とします。
木造に関しても在来軸組工法とツーバイフォー工法がありますが、今回は在来軸組工法を基準にします。
この在来軸組工法とツーバイフォー工法はどっちが良いのか?というブログもあるので、良かったらご覧ください。
同じ木造でもメリット・デメリットが全然違うので、考え方の参考になると思います。
なぜ構造が重要なのか?
本題に入る前に「なぜ構造が重要なのか?」をお伝えすると、これは当たり前ですが「後から直せない、替えられない」からです。
たとえば、何かを失敗して屋根や外壁、室内の床やクロス、断熱材を新しく替えるというのはたいへんでお金もかかりますが、後からやろうと思えばできないことではありません。
ですが、建物の構造やそれを支える基礎を替えたり、やり直したりというのは、つまり家を建て替えるということになるためかなり難しくなります。
そのため、目に見えない部分ほどしっかりと検討して、どういった造りにするのかを考えておかないといけません。
この基礎に関しても作り方によってメリット・デメリットがあり、実は業界の闇が潜んでいる部分で、これについても別のブログで詳しく解説しているのでぜひ読んでみてください。
住宅構造を選ぶポイント①「性能」
住宅構造を選ぶ大切なポイントは、「性能」「コスト」「計画」の3つがあります。
まず1つ目のポイント「性能」に関しては、「耐久性」「保温性」「耐震性」「防火性」が大切になり、それぞれを表にすると下の表のようになります。
①性能 |
||||
構造種類 |
耐久性 |
保温性 |
耐震性 |
防火性 |
鉄骨造 |
50年~100年以上 |
△ |
◎ |
◎ |
木造 |
100年以上 |
◎ |
◎ |
◯ |
鉄骨の特徴
まずは鉄骨造の特徴ですが、構造の耐久性は軽量鉄骨の場合50年程度、重量鉄骨の場合には100年以上は持つようになっています。
保温性に関しては、鉄は木に比べて400倍くらい熱を通しやすいため構造体で断熱がしにくいのと、建物内の気密を確保するのが難しいため、保温性は低くなってしまいます。
耐震性と防火性に関しては皆さんのイメージの通りで、地震に強く火にも強くなっています。
木造の特徴
木造の特徴ですが、耐久性に関しては適切に通気ができる施工がされていることを条件に、100年以上は持つ構造です。
保温性能に関しては、断熱も気密も取りやすい構造なので、高気密高断熱の住宅を実現しやすくなっています。
耐震性はしっかり構造計算して耐震等級3を取得し、さらに制振装置をつけると鉄骨造と同等の強度を保つことができますが、3階建て以上では鉄骨造の方が有利になります。
木造は防火性も優れている
防火性については、近隣など外部からの貰い火は屋根や外壁に不燃処理をしているため、基本的には問題ありません。
家の中で火事になっても、カーテンや家具などのインテリア系や床などは燃えますが、内装下地にも不燃材が貼ってあるため、簡単に燃え広がることはないようになっています。
これは鉄骨造でも木造でも、内装は一緒なので同じ事が言えます。
木造は「木で出来ているから燃えやすい」と思う方がいるかもしれませんが、実は木を燃やしても表面は炭化しますが木の芯はなかなか燃えないため、強度的には問題ないと立証されています。
鉄骨は熱による変形リスクあり
逆に、鉄骨は火によって加熱されると変形してしまうリスクや、急激に冷やすことで脆弱になる可能性があります。
ざっくりの性能比較は以上ですが、このパートで鉄骨造と木造はそれほど大きが性能の差はないことが、伝わったかと思います。
住宅構造を選ぶポイント②「コスト」
次に2つ目のポイント「コスト」に関しては、「初期費用」と「光熱費」に分けることができ、表にすると下のようになります。
30坪2階建 |
②コスト |
|
構造種類 |
初期費用 |
光熱費 |
鉄骨造 |
600万円~700万円 |
△ |
木造 |
400万円 |
◎ |
※30坪2階建てを前提にした場合
鉄骨造の初期費用は構造躯体費用の他に、木造に比べて強固な基礎にしなければいけないため、基礎工事の追加費用がかかります。
さらに、建物が重く地面に負荷がかかるため、地盤改良工事もほとんどの場合で必要になり、トータルをすると600万円~700万円は初期費用でかかります。
光熱費に関しては先程もお伝えしたように、保温性能が高くないため光熱費が余分にかかってしまいます。
木造のコスト
木造の場合は構造躯体費用と基礎工事費用で400万円くらいになり、光熱費に関しても高気密高断熱を実現することで、コスパ良く快適に暮らす事ができます。
このパートで鉄骨の方が木造に比べて初期費用が1.5倍くらい高いということと、光熱費も割高になってしまうため、木造が有利ということがわかってもらえたと思います。
住宅構造を選ぶポイント③「計画」
最後は3つ目のポイント「計画」についてです。
この「計画」というのは間取りの自由度や法的な制限など、汎用性の高さという意味になり、これも大まかに表にまとめました。
③計画 |
|||
構造躯体 |
3階建て以上 |
防火地域の制限 |
大空間 |
鉄骨造 |
◎ |
◎ |
◎ |
木造 |
△ |
◯ |
◯ |
鉄骨の計画
計画については鉄骨造が有利で、たとえば土地が狭く生活スペースを確保できない場合には、3階建て、4階建てなどで耐震性も確保した計画が可能です。
また、防火地域、準防火地域などの制限がある場所でも、鉄骨なら問題なく建築できます。
鉄骨造は柱と柱の間隔を開け長いスパンを飛ばしても強度が担保されるため、5メートルくらいの大開口の窓がほしい、柱を1本も立てない30畳以上の大空間LDKがほしい、という方におすすめです。
木造の計画
木造は2階建てまでなら全く問題ありませんが、3階建て以上は構造計算をしても強度的に弱くなってしまいます。
また、防火地域や準防火地域での制限も厳しく、建てられても素材などが制限されて自由度が少なくなってしまいます。
空間は木造では基本4m以上スパンを飛ばせないため、鉄骨と比べると開放感が出しにくいのですが、特殊な工法でSE工法やストローグ工法などを採用すれば、同様に大空間は可能です。
しかしプラス200万円くらい費用がかかり、コスト面で不利になってしまいます。
このパートでは計画についてお話しましたが、ここは鉄骨の圧勝になります。
まとめ
冒頭でもお伝えしたように3階建て以上なら鉄骨造で、平屋や2階建てなら木造が圧倒的に有利になります。
先程の住宅構造を選ぶ大切な3つのポイント、「性能」「コスト」「計画」をまとめて表にすると、このようになります。
30坪 2階建 |
①性能 |
②コスト |
③計画 |
||||||
構造種類 |
耐久性 |
保温性 |
耐震性 |
防火性 |
初期費用 |
光熱費 |
3階建て以上 |
防火地域 |
大空間 |
鉄骨造 |
50年 ~ 100年以上 |
△ |
◎ |
◎ |
600万円 ~ 700万円 |
△ |
◎ |
◎ |
◎ |
木造 |
100年以上 |
◎ |
◎ |
◯ |
400万円 |
◎ |
△ |
◯ |
◯ |
木造の唯一のデメリットは計画ですが、一般的な地域で一般的な土地に建てる2階建てまでであれば、木造の方がすべて高性能でコスパの良い住宅を建てることができます。
逆に、防火地域や狭小地で3階建て以上にするなら鉄骨造が有利ですが、一方で鉄骨は保温性能の担保は難しく、コストは1.5倍ほどアップしてしまうというデメリットがあります。
なんとなく鉄骨造と木造のメリット・デメリットや、造り方による効果の違いはイメージできましたか?
冒頭にもお伝えしましたが、今回の話はキッチリ施工されていることが大前提です。
構造計算をしっかり行い保温性能も計画的に担保して、最終的に現場で適切に施工をされることがもっとも大切です。
そうした会社の施工力も考慮しながら、自分たちの状況や環境、理想とする土地や建物に合わせて、正しい構造の選択をしてもらえたら嬉しいです。
これから家づくりを考えている人にとって、今回の内容が少しでも参考になれば幸いです。
ご覧いただきありがとうございました。
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