2022.04.01
【自然と環境を生かす】パッシブデザインってどんな家?作り方と注意点を徹底解説
皆さんもせっかくマイホームを建てるなら、昼間でも照明を付けて明るくしないといけないとか、エアコンをフル稼働して室温調整するより、太陽の光や熱、自然の風をできるだけ活かして、一年中快適に過ごせる家にしたいと思いますよね?
もちろん文明の利器で、便利な製品やモノを活用して生活するのも大切だと思います。ただ地球全体が温暖化の影響で脱炭素化やSDGsの流れになっています。実際に自然の力を活かして生活する事で、省エネになり光熱費も削減できるなら、選択しない理由が無い気がします。
そんな自然環境を活かして、家の中を温めたり涼しくする家の作り方の一つに「パッシブデザイン」と呼ばれる方法があります。実際に日差しや風を最大限に考慮した設計をする事で、最小限の冷暖房で快適に過ごせる家づくりが可能になっています。
ただパッシブデザインに限らない事ですが、実際に選択するには知っておいていただきたい注意点もあります。また言葉を聞いた事はあっても、具体的にどんな家かわからない方も多いと思います。
そこで今回のブログでは、パッシブデザインを作る条件と建てるときの注意点をお伝えして、パッシブデザインへの理解と、良いなと共感できる部分があれば少しでも家づくりに、その要素を取り入れていただけたら幸いです。
大工時代を含めて15年以上、たくさんのお客様の家づくりにたずさわった経験をふまえて、これから家を建てる人が失敗しないための情報を、できるだけわかりやすくお伝えしますのでぜひ最後までご覧ください。
●パッシブデザインを作る条件と注意点
まず結論からいうと、パッシブデザインを作る5つの条件はこちらです。
1.断熱
2.日射遮蔽
3.日遮熱利用
4.自然風利用
5.昼光利用
また注意点は次の2つです。
1.設計力
2.コスト
それでは1つずつ解説していきます。
●パッシブデザインとは
まずパッシブデザインの概要を改めてお伝えすると、環境先進国のドイツで発展してきた設計思想で、パッシブを直訳すると受け身という意味になります。
なので家で言えば、冬は太陽の光を受け入れて家の中を温めたり、夏は光を遮りつつ風を受け入れて溜まった熱を外に逃がします。できるだけエアコンや床暖房などの機械に頼らず、室内環境を快適にする設計手法の事になります。
実際にこのパッシブデザインを少しでも取り入れる事ができれば、過剰に高気密高断熱を追求する必要もなくなります。省エネで光熱費も抑えられて、家全体が一定の室温を保ってくれるので、ヒートショックの防止にもなってくれます。
ではここから具体的に、パッシブデザインの家を作るための条件を5つお伝えしていきます。
1.断熱
パッシブデザインの条件1つ目は、断熱と気密です。
これはパッシブデザインに限らないですが、快適な住環境を作ろうと思うと、ある程度の断熱気密性能が大前提で必要になります。例えば冬の寒い日に、せっかくパッシブデザインを活用して南の窓から温かい太陽光を取り入れても、家の保温性能が悪ければ熱は外に逃げていきます。
また単純にエアコンの冷暖房を使って、室温調整しても同じ事が言えるので、まずは適切な断熱材や窓サッシを採用し、しっかり気密処理をする事が必須です。
この断熱気密性能を高くするポイントや、失敗しないための注意点については、別の動画で詳しく解説していますので、興味のある方は下のリンクからぜひご覧ください。
2.日射遮蔽
パッシブデザインの条件2つ目は、日射遮蔽です。
これはかんたんに言うと、夏の暑い太陽光が南側の窓から入らないように、日差しをカットする事です。
日本家屋で見るようなスダレもそうだし、軒の出を深く出したり、窓の上に庇を付けたり、窓の前に落葉樹を植えたりすると、太陽光での室温上昇が防げて、真夏の冷房効率を高める事が可能になります。
ただ軒や庇の出幅は、あまり出しすぎると冬の太陽光までカットされて寒くなってしまいます。なので夏の太陽の高さ、日が差す角度を日照シミュレーションで計算したり、家を建てる地域や周りの建物の高さなども考慮して設定する必要があります。
そのためパッシブデザインについての専門的な知識を、ある程度持った住宅会社に依頼するようにしましょう。
ちなみに、エアコン以外で夏の暑さを解消する方法についても、別の動画で詳しく解説していますので、興味のある方は下のリンクからぜひご覧ください。
3.日射熱利用
パッシブデザインの条件3つ目は、日射熱利用です。
これは先程の日射遮蔽とは逆のイメージで、寒い冬にしっかり温かい太陽光を取り入れるため、冬の太陽の高さや軒の出を計算して窓を設置し、なおかつ日が当たる部分に蓄熱性の高い素材を使って熱を蓄える事です。これにより夜になっても、家の中を暖かい空間に保つ事ができます。
具体的な蓄熱効果のある素材としては、床や壁に無垢の木を使ったり、コンクリートやタイルを施工する事がとても有効です。たまにLDKの窓側を、すべて土間にしたおしゃれな家を見かけますが、実はデザインや使い勝手だけでなく、蓄熱効果を活用した日射熱利用だったりします。
過去の動画で、無垢床のメリット・デメリットや、内装材の失敗しない選び方についてご紹介していますので、まだ見た事が無い方はよろしければご覧になってください。
4.自然風利用
パッシブデザインの条件4つ目は、自然風利用です。
夏や冬はなかなか窓を全開にする事はないと思いますが、春や秋の気持ちいい風は取り入れた方が良いです。断熱性能を高くしすぎると家の温度が上がりすぎて、オーバーヒートする可能性があるので、その熱気を外へ排出する対策としても通風計画は大切になってきます。
当たり前ですが、自然の風は季節や家を建てる地域によって方角が変わるので、自然風利用を最大化しようと思うと、風向きや風量とかを計算しシミュレーションをする事が必須です。
窓の大きさや位置を考えたり、外壁に袖壁を作ったり、窓の種類を縦すべりにする事で、より家の中に風が採り入れやすくなります。自然風が好きな方は、その辺りも考慮してプランするようにしましょう。
5.昼光利用
パッシブデザインの条件5つ目は、昼光利用です。
今の家は昼間でも照明を付けないと暗いから、明るい家が良いとか日当たりが心配とかは、お客様から聞く言葉No.1ぐらいのワードです。それだけマイホーム建築を考えている多くの方が、気にしている部分だと思います。
パッシブデザインの昼光利用の定義は、昼間に照明を付けなくても太陽の光をうまく利用して、室内を明るく快適に、なおかつ自然エネルギーの活用で、電気代の削減も実現する事を目的にしています。
具体的な方法としては、ここまでご紹介したパッシブデザインの要素を入れつつ、南側に大きな窓を設けたり、光がたっぷり入るように吹抜けや高天井、中庭を作ったりします。外から取り入れた光がさらに奥に届くように、室内の壁を天井まで立ち上げずに空けておくこともあります。
間取りや立地環境にもよりますが、いろいろな工夫をする事ができる部分なので、家の中が暗くならないようにしっかり配慮するようにしましょう。
●パッシブデザインで気をつけたいこと
続いてパッシブデザインを採用する際に、気をつけていただきたい注意点を2つご紹介します。
1.設計力
パッシブデザインの注意点1つ目は、設計力です。
パッシブデザインの家を作るには、周囲の環境や自然条件を計算する豊富な知識や、高い計算力が設計者に必要です。正直しっかりパッシブデザインを形にできる人は、全国を見てもそんなに多くはないと思います。
しかも都市部などの狭小地や、周りが家に囲まれて日当たりや風通しが良くない、悪い立地条件もあると思います。そこにプラスアルファで、お客様のこだわりや間取りの希望を加味しながら、バランスも考えて設計する必要があります。
なのである程度実力のある設計者にお願いしないと、パッシブデザインだけど理想と全然違うとか、逆に理想通りだけどパッシブ要素はなくて、ただの高気密高断熱の家になってしまう可能性があります。
2.コスト
パッシブデザインの注意点2つ目は、コストです。
基本的にパッシブデザインは、そんなにお金がかかる設計手法ではないですが、前提として高気密高断熱の家が必須になるので、UA値でいくと0.3~0.4ぐらいは最低でも必要になります。
そのため一般的なUA値0.6~0.8前後の断熱性能の家と思うと、断熱材を厚くしたり窓サッシのグレードを上げたりして、300万円前後はコストアップしてしまいます。
あとは日射遮蔽のために軒や庇を深くしたり、遮蔽ルーバーを設置したり、蓄熱利用でタイルやコンクリートを施工する事で、少しずつですが追加コストも必要になります。
ただ初期費用だけで見てしまうと、ただ高いだけの家になってしまいますが、自然利用をする事で光熱費の削減効果は間違いなくあります。
30年とか40年とか長いスパンで光熱費シミュレーションをして比較すれば、最終的には回収できるコストになるので、長期目線での経済性や暮らしやすさを優先したい方には、おすすめの設計手法になります。
●まとめ
今回ご紹介したパッシブデザインを作る条件はこちらです。
1.断熱
2.日射遮蔽
3.日遮熱利用
4.自然風利用
5.昼光利用
また注意点としては、次の2つになります。
1.設計力
2.コスト
パッシブデザインの家は自然エネルギーを活かして生活できるので、電気代などのランニングコストが抑えられるのはもちろん、高気密高断熱で家中が快適な温度になり、エコで過ごしやすい家になります。
ただ実際に作るには、家を建てる場所の季節ごとの太陽の動きや風を計算したり、周りの建物とかの影響を考えて作る必要があります。
そのため豊富な知識や実績がある設計者でないと難しい面もあり、現実的にコストや立地の問題もあるため、今回ご紹介したパッシブデザインの要素をできる範囲で少しでも取り入れて、素敵なマイホーム建築の参考にしていただけると幸いです。
ご覧いただきありがとうございました。
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