2023.12.24
【四号特例の縮小】2階建て以下の木造住宅は、ほとんど構造計算されていないという事実、知っていますか?
一般の方にはあまり知られていませんが、よくある2階建て以下の木造住宅を建てる際、構造計算がされていないケースが大半です。
住宅建設にかかわる工務店やハウスメーカーの中には、「やる必要ない」「コストがかかるのでおすすめしない」というようなアドバイスをするところも少なくありません。
しかし、2025年から施行される建築基準法の改正案「四号特例の縮小」によって、今後は2階建て以下の木造住宅においても、建築確認申請の際に構造耐力が水準をクリアしているかの証明が必要になります。
そこで、改めて木造住宅の構造計算と「四号特例の縮小」について、詳しくお話しします。
「地震に強い家にしたい」「ずっと住み続けられる家を建てたい」という方は、ぜひ参考にしてください。
日本で最も多い“木造住宅”
様々な住宅構法が進化している中、未だ日本において住宅で最も多いのが「木造住宅」です。
総務省のデータによると、2021年時点の全住宅における木造率は「58.1%」にも上ります。
住宅の半数以上を占める木造住宅ですが、実はその80%以上において構造計算がされていないと言われています。
地震の多い日本にもかかわらず、このデータは驚きですよね。
今までなぜ構造計算が必須でなかった?仕様規定との違いは?
現行の建築基準法においては、2階建て以下の木造住宅を新築する際の建築確認申請では、構造計算に関する資料の提出は求められません。
そのため、構造基準をクリアしているかどうかは、設計した建築士に100%委ねられているのが現状なのです。
ただし、この仕組みは「構造に配慮しなくても良い」という訳ではなく、建築基準法で定められている「仕様規定」の基準をクリアすることが前提となっています。
仕様規定によって、“最低限の性能レベル”が担保されることになります。
ここで注意しなくてはいけないのが、建物規模によっては、行政へ建築確認申請をする際に、この仕様規定を満たしているか証明する書類や構造計算データの提出は義務付けられていないという点です。
このような現状の中、各地で発生している大規模地震の際に、今まで“安全”と言われてきた「2000年耐震基準」をクリアしたとされていた住宅が多く被害を受けてしまいました。
つまり、建築確認を通っているからと言って、必ずしも地震に強いとは言い切れないのです。
このような状況を生み出した一因として、仕様規定を満たしているか、構造計算に基づく設計がされているかの確認不足が考えられます。
そこで2022年に国会にて可決されたのが、「四号特例の縮小案」なのです。
2025年4月に施行予定の「四号特例の縮小」|廃止と思われる理由
2022年6月に公布された「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律」の中で、2025年以降に建てられる全ての建築物において“省エネ化”が義務付けられることとなりました。
それに伴って、木造戸建住宅を建築する場合の建築確認手続きが見直されたのです。
これがいわゆる「四号特例の縮小」です。
今までは、建築基準法で決められている条件を満たした「四号建築物」は、建築確認審査の一部を省略できましたが、この四号特例建築物がなくなります。
【これまでの「四号建築物」】
- 特殊建築物ではなく、不特定多数が利用しない建物(=住宅など)
- 木造2階建て以下の建物
- 延床面積が500㎡以下の建物
- 建物高さが13m以下もしくは軒高さが9m以下の建物
→ 該当する建築物は、建築確認審査省略制度の“対象”
【2025年以降は「新二号建築物」と「新三号建築物」に】
新二号建築物:木造2階建て及び木造平屋建て(延べ床面積200㎡超)
→ 全ての地域において、建築確認審査省略制度の“対象外”
新三号建築物:木造平屋建て(延べ床面積200㎡以下)
→ 全ての地域において、建築確認審査省略制度の“対象”
四号特例制度ができたのは1983年で、住宅の建設ラッシュに伴い建築確認申請に割ける行政の人材不足が否めず、構造面の安全性確保は建築士に任せざるを得ない状況でした。
しかし、たびたび起こる大地震の際に、安全と思われていた住宅が倒壊する事例が散見されたので、消費者の安全や住まいを守るために、特例の適応範囲を縮小することが決定したのです。
インターネットなどで調べてみると「四号特例の廃止」と表記している情報を目にするかもしれませんが、今回の改正はあくまでも“縮小”です。
2006年に、度重なる耐震偽装を防ぐ目的で「四号特例廃止案」が制定されましたが、建築業界や日本経済低迷などを理由に無期延期となっています。
そのため、「四号特例の縮小」は、住宅業界を大きく揺るがす決定と言われています。
2025年以前でも木造住宅の“構造計算”はマスト
四号特例縮小に伴い、2025年以降は木造住宅においても構造計算が必須となります。
この決定は、逆を返すと「2025年より前なら構造計算はいらない」という意味にも取れるかもしれません。
確かに、そのような説明をする会社もありますが、私たち“ハピナイス”はそうとは思っていません。
なぜなら、構造計算は以下の点を評価する上で欠かせない指標だからです。
- 地震・積雪・台風へどのくらいの耐力があるか
- 外的な力が加わった時の変形リスクはどのくらいか
これらを科学的な根拠に基づき、客観的に判断するためにも、構造計算は欠かせません。
ここで「構造計算しなくても、建築基準法を守っていれば安全な住宅になるのでは?」という疑問が浮かぶ方もいるでしょう。
確かに、国で定めた法律をクリアしていれば、住宅の安全性は確保されると思われがちです。
しかし、建築基準法で定めているのは、あくまでも“最低限の性能レベル”である点は否めません。
熊本地震においては、2000年以降に建てられた比較的新しい住宅においても、接合部の仕様が不十分であるなど、仕様基準を守っていない住宅が被害を受けたというデータも出ています。(参考:国土交通省|「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会」報告書のポイント)
このような現状を踏まえると、法的に義務化されていないとしても、やはり構造計算は必要と言えます。
これから重要となる建築会社を選ぶポイント
「四号特例の縮小」によって、住宅の安全性が公的に審査され、どの住宅会社に頼んでもある一定以上の基準が担保されることになります。
そのため、これから家を建てる消費者にとって、有益な決定であることは間違いありません。
ただし、構造計算が必須となるということは、その分建築コストが上がることを意味します。
なぜなら、構造計算は一般的な2階建て木造住宅の場合で「30万円前後」の費用がかかり、そのコストをこれまでの価格へ上乗せする会社が大半だからです。
ここでポイントとなるのが、全ての会社が値上げする訳ではないという点です。
今までも木造住宅へ構造計算を行ってきた建築会社は、これまで培った設計技術と知識をもとに、高い耐震性を持つ住宅をスムーズに計画できます。
そのため、2025年以降は構造計算の実績が豊富な会社へマイホームの建築を任せることが、より重要と言えるでしょう。
まとめ
今まで、木造住宅の構造強度は行政が審査することなく、建築士の裁量に委ねられてきました。
ただ本来構造計算は、「義務だから行う」ものではなく、「住む人の安心を確保するため」に必要なはずです。
四号特例の縮小によって、住宅業界は大きく変わると言われていますが、ハピナイスは今までもこれからもお客様に心から満足していただける住まいづくりを行なっていきます。
以前の動画では、あまり知られていない耐震等級についてや地震に強い家の見分け方について詳しくお伝えしていますので、興味のある方はぜひ合わせてご覧ください。
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